The Son (Duke of York’s Theatre)
10/25/2019, 11/2/2019
フランス人劇作家フロリアン・ゼレールによるThe Father(『父』)、The Motherに続く作品群の三作目となる新作である。翻訳は他の作品も手がけたクリストファー・ハンプトンが引き続き携わっている。一幕、1時間45分。
私は、ゼレールの芝居はロンドンでThe Father、The Truthを鑑賞済み、The Motherは未見。日本で『誰も喋ってはならぬ!(Une Heure de tranquillité)』の録画なら鑑賞したことがある。The Sonはトランスファー公演の最後の時期で、千秋楽を鑑賞できた。
Cast & Creative
作:Floriean Zeller 翻訳:Christopher Hampton 演出:Michael Longhurst 美術:Lizzie Clachan 照明:Lee Curran 作曲・音響:Isobel Waller-Bridge
出演:Amanda Abbington, Laurie Kynaston, John Light, Amaka Okafor 他
感想
開演前には、壁一面が真っ白な室内で、主人公の少年がマジックで壁に図や文字を書きなぐっている。舞台はパリ、主人公の母親が離婚した父親に息子の異変を訴えに訪れるところから芝居が始まるが、父親はなかなか事態を理解できない。ティーンエイジャーの反抗期のように見える衝動や不登校、両親が離婚した後の不安定な様子に焦点が当てられる。
The Fatherで認知症の新しい表現を生み出した手段と比べると、The Sonは、話の作りもその見せ方もかなりストレートだ。ティーンと家族のメンタルヘルスという問題は社会的には目新しいものではないと思うが、このように真正面から取り上げている芝居を観てこなかったので、その点では新鮮だった。ストーリー展開はある程度予想がつくため驚きは少ないが、だからといってこの物語の重苦しさは軽減されない。息子の視点と親の視点両方に重きが置かれる展開からすると、「父と息子」というタイトルの方が適切かもしれない。
セット転換は、白い壁の一部を開けたり閉めたりする程度。場面と場面の繋ぎでは時折、主人公が無言で暴れる様子が挟まれ、アクションを用いた転換がスマートだと感じた。父親が息子に言葉での説明を幾度も求める態度と対照的である。
台詞の応酬のテンポが良く人工的すぎるように感じたのはやや気になったものの、俳優たちの熱演のエネルギーにかなり揺さぶられる。特に父親役のジョン・ライトが後半に全身全霊で見せてくれるものには、観客のために物語を演じるプロはこういうことができるのかと圧倒された。