Emilia

Shakespeare’s Globeによる映像配信を視聴。初演は2018年のシェイクスピアズ・グローブ。2019年にウエストエンドのヴォードヴィル・シアターにトランスファーした際の映像を配信した。

作:Morgan Lloyd Malcolm 演出:Nicole Charles

詩人エミリア・バッサーノ(ラニエ)(1569-1645) を題材にした舞台。作家も演出家も、出演者もみな女性のオールフィーメールカンパニー。

舞台で描かれるのは、詩に情熱を持つ彼女がいかに将来の結婚のために教育されたか、男女の駆け引き、シェイクスピアとの関係、庶民の女たちとの関わりなどである。少女時代から高齢期までのエミリアを3人の女優が演じる。この3人の俳優は比較的自由に舞台を出入りし、流動的に語りを担当する。

友人と話していて気が付いたのだが、今まで数回だけオールメール、オールフィーメールの舞台を見たことがあるが、俳優の性別が固定されていることが劇効果として有効であると感じたことが実際はほぼない。今作は、意図はわかるが、女性だけで男性を演じることが男性陣の人物造形の奥行きを無くし、むしろ薄っぺらくしてしまっているのではないかと感じた。ただ、このカンパニーに男性が入って欲しいとも思わない。

私は事前にエミリアの存在を知らず、Wikipediaの最初の文章だけ読んで臨み、楽しく鑑賞できた。シェイクスピアと恋仲になるあたりはあまり信憑性がないのだろうと思ったし、エミリアによるフェミニスト的発言はかなり現代的で、歴史上に実在した人物の話し方というよりは、その名を借りた作家の語りであるという印象があった。エミリア・バッサーノを知る人から見れば、あまり嬉しくない描き方ではないかとも推測した。

しかし、今の時代に女性が「お前たちだけで独占せず女にも声をよこせ」と言う、そんな直接的なフェミニストスピーチが舞台にのっていても良いと思う。それで喜ぶ観客がいること自体は当然だし、私も何度もスカッとした。いつか自分の発言が盗まれてグローブ座でかかった時にはこう言って怒ろう、と思えたセリフもできた(そんな機会はない)。

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