23/8/2024 Hello, Dolly! (London Palladium)
作曲:Jerry Herman 脚本:Michael Stewart 原作:The Matchmaker by Thornton Wilder 初演の演出と振付:Gower Champion 演出:Dominic Cooke
出演:Imelda Staunton, Andy Nyman, Jenna Russell, Tyron Huntley, Harry Hepple 他
どういうミュージカルか知らないまま、イメルダ・スタウントンを見るためにチケットを買った。表題曲しか知らなかったので物語にはポカーンとしてしまったものの、分かっていないなりにも熱狂的な観客に混ざって楽しむことができた。
以下、ネタバレありのまとまらない感想!
Wikipediaで少し調べたところ、大元は1935年のイギリスの劇作家ジョン・オクセンフオードによる一幕物The Day Well Spent。さまざまな経緯(芝居に拡大され、翻訳され、翻案され、改訂され)を経てきたもの(Thornton Wilder “The Matchmaker” 1954)を下敷きに、ブロードウェイミュージカルHello dolly!が制作され、1964年に上演されたとのこと。1969年の映画『ハロー・ドーリー!』をご存じの方も多いだろう。ただ私は映画も見ておらず、直前にあらすじを検索しておいた程度。
物語は、ニューヨークでマッチメイカーとして活躍する未亡人のドーリーが、ニューヨーク市の北の都市ヨンカーズの知られた小金持ちホレスを、ニューヨーク帽子屋の主人で未亡人のアイリーンに仲介し、プロポーズする予定日の朝から始まる。ホレスの姪と恋人、ホレスの会社で長年勤めている若者コーネリアスとバーナビー、帽子屋の店員ミニーを含めた騒がしいコメディで、最終的には皆が結ばれるハッピーエンドを迎える。
ドリーがホレスとアイリーンの仲を取りもち、プロポーズまで話を進めたはずなのに、なぜか劇が始まる前からドリーはホレスのことを好いており、再婚相手にしたいと狙っている。じゃあなぜそんなお膳立てをしたのか?ケチなおじさんだか?と思うものの、ホレスを演じるアンディ・ナイマンがふっくら可愛いので、まあいっ、かな〜?みたいな感じで見続ける。
ドリーが馴染みのレストランに来てウェイター全員の歓待を受け、しばらくずーっとウェイターが踊り続けるシーンも、何も話は進まないのだが、古いミュージカルってこういう時間があるよな、と思って見続ける。
このように話自体には特に共鳴するところはないが、出演者の人数が多く衣装も派手で、大型ミュージカルの迫力に押されて気分は高揚する。序盤の楽曲”Put On Your Sunday Clothes”で、皆が笑顔で電車に乗りこみ、振動を体で表現しながらニューヨークに出て行くシーンで、ミュージカルを見ているという喜びに涙が出てくる。話の大筋の内容に関わらず、盛り上がる音楽・歌って踊る俳優の躍動感と笑顔・めかし込んで出かける喜び、これで泣けてしまうわけだ。知らなかったでしょ。いやみんな知っているからミュージカルが好きなのか?
表題曲Hello, Dolly!が始まると、観客が歓声を上げ熱狂的にイメルダ・スタウントンを迎える。このミュージカルの主人公ドリー役は演劇界のスターがやるべきであり、それが今のウエストエンドではイメルダ・スタウントンなのだ、ということを舞台と観客席が教えてくれる。
そして彼女はよく働くスターである。結局ストーリーはドリーの采配のままに物事が進む。説明や説得や、教訓めいたお言葉やバラードや街の移動やパレードや、とにかくイメルダ・スタウントンが何でもやってくれる。とにかく彼女が最初から出て来て、たくさん動いて喋って歌う!という有り難みに近い感激がある。(教訓めいたお言葉は急に観客が受け止めてフムゥ〜と相槌を打つことになるのが妙におかしみがある。)
ホレスは従業員に十分な賃金を与えずこき使い、結婚相手を家事手伝いとでも思っているような嫌な性格のやつだが、ドリーとの交流で改心する。演じるアンディ・ナイマンもコミカルな映画に出てくる嫌なやつという程度で、怒っているふうでも可愛いらしい雰囲気。また、ホレスに雇われている従業員2人組コーネリアスとバーナビーは、芸達者な2人ハリー・ヘップルとタイロン・ハントリーが担当している。特に年上のコーネリアス役のヘップルが、歌って踊って笑いをとって、かなり目立っていた。