Kathy and Stella Solve a Murder!

Kathy and Stella Solve a Murder! (Ambassadors Theatre)

26/8/2024

作・詞:Jon Brittain 作曲・詞:Matthew Floyd Jones

出演:Bronté Barbé, Rebekah Hinds, Imelda Warren-Green, Hannah-Jane Fox, Elliotte Williams-N’Dure, Elliot Broadfoot, Ben Redfern

2022年のエジンバラフリンジで上演され、国内ツアー、ブリストル・オールド・ヴィクでの上演を経て、2024年春夏にウエストエンドで上演されたミュージカル。見ている間ずーっと楽しかったので、全然数は見てないけど、これを2024年マイベスト舞台としたい。

実際にあった過去の殺人事件について語るポッドキャストを配信している幼なじみの女性二人が、現実に殺人事件に鉢合わせ、関係性に変化が起こっていく様子を描くコメディ。幼なじみのキャシー(バルべ)とステラ(ハインズ)は、キャシーの実家のガレージから、毎週マグカップ片手にポッドキャストを配信している。二人とも収入があまり無いので田舎で家族と暮らしており、ポッドキャストは生きがいでも現実逃避でもあるようだ。素人ながら探偵のようなことをしようとして警察官と衝突するあたりは予想通りだが、オンラインで注目を浴びるために無茶なことをしてしまうといった、現代らしい展開もある。子供の頃にトゥルー・クライムものへの興味を通して親友となった二人の支え合う関係性が感動的なのだが、物語が発展していくなかで、お互いにべったりすぎて危ういところがあるということもきちんと描いていく。

この二人の距離感、家族との距離感、恋愛の出てこなさ、そして女性観客という立場からの見やすさにめちゃくちゃ2020年代を感じる。全ての曲に分かりやすく盛り上がりを作りすぎなところも新作っぽい。アンバサダーズ・シアターはウエストエンドにしては比較的コンパクトな劇場で舞台も狭く、出演者は7人のみ、バンドも確か4人だけで、こじんまりした雰囲気。ピカピカのセットや衣装のキャンプなテイストや歌の作り方が、「ザ・ミュージカル」という感じで、これを狭めの空間で見られるのが楽しい。殺人というシリアスな題材とオタクの不謹慎さの掛け合わせが笑えるし、全曲に盛り上がりどころ聴かせどころがあり、キャストの歌唱力もあって初っ端から盛り上がる。展開は少し強引でコメディに振りすぎなところもあるが、それでも良いと思える歌の力があって、すっかりファンになってしまった。

残念なのは、キャストレコーディングアルバムが制作されないまま上演が終わってしまったこと。WestEnd Liveの映像はあるのでそれを観てください。

ちなみに、私はイギリスのミステリードラマが好きなので、タイトルだけ見て「おや、これは私のためのミュージカルなのでは?」と思ったら、実録物ポッドキャストの話だったのでややジャンル違いだった。トゥルー・クライム系のポッドキャストが人気を得て10年くらい経つのではないかと思うけれど、作者によれば、コロナ禍でこのようなポッドキャストが人気を得ていたものの、それらを好む女性中心としたリスナーがバカにされていた状況を苦々しく思っていたという動機もあったようである(プログラムを読んだ時の記憶が間違っていなければ)。

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