PUNCH (Samuel J. Friedman Theatre)
2025年11月
作:James Graham 演出:Adam Penford 原作:Jacob Dunne (2022) Right From Wrong.
美術・衣装:Anna Fleischle 照明:Robbie Butler
出演:Camila Canó-Flaviá, Victoria Clark, Will Harrison, Cody Kostro, Piter Marek, Sam Robards, Lucy Taylor
実際の出来事を題材にすることでお馴染みの劇作家ジェームズ・グレアムの新作。2024年にノッティンガム・プレイハウスで初演。2025年には、ロンドンとブロードウェイでも上演された。今回は、ブロードウェイ公演の配信を視聴。
ちなみにチケット代が75ドルと配信にしては高額でびっくりしたが、東京で生の芝居を見るのと比べればまあ許容範囲か…面白いのは批評で知ってるし…みたいな気持ちで購入。結論としては、思い切って見て良かった。チケット代の価値はあったと思う。
2011年に実際に起きた事件を発端とし、その後の加害者と被害者遺族の交流を描く芝居。加害者ジェイコブ・ダンは、いつものように仲間に呼ばれてパブの乱闘に参加し、その場に居合わせたジェームズ・ホジキンソンを一発殴る。芝居の中ではかなり軽い気持ちで放たれたこの一発のパンチで相手は命を落とし、ジェイコブは故殺で有罪となる。その後、遺族である両親がジェイコブとの交流を希望し、両者が事件のあとの人生を立て直していく経緯が描かれる。修復的司法(restructive justice)のプロセスで、いかに被害者と加害者それぞれが事件の後に立ち直っていけるのか、ということを描く芝居でもある。
私は、ジェームズ・グレアムの芝居は、実話をロマンチックでセンチメンタルに描きすぎると思うことが多い。ただ、今回のPUNCHは、青年が亡くなった実在の事件を扱うもので、その家族の悲しみや、罪を犯してしまった若者とその家族の苦悩なども描かれているので、このセンチメンタルさがちょうど良い。被害者遺族の態度にしても、主人公の更生にしても、出来すぎた感動の物語なのだが、実話なので、出来過ぎも何もないのだ。
実在の事件を描くのに、目線が優しくて何が悪いのか。その方が良いではないか。この世の中で何もかも厳しくある必要はないじゃないか。というのが見た直後の感想であった。
両親とジェイコブが初対面するシーンはかなり張り詰めた雰囲気で、次に誰が何を言うのか、この問いかけにジェイコブが何と答えられるのか?と、固唾を呑んで画面を見ていた。多分、劇場にいた観客も、全世界の配信で見た観客も同じではないだろうか。この瞬間を共有することに演劇の価値があると思う。
