Ben and Imo OT On Screen (Orange Tree Theatre)
2025/May
作:Mark Ravenhill 演出:Erica Whyman 美術:Soutra Gilmour
出演:Samuel Barnett – Ben, Victoria Yeates – Imo
ベンジャミン・ブリテンとイモジェン・ホルストの共同制作の日々を描く二人芝居。ブリテンはイギリスの最も偉大な作曲家の一人だが、彼に比べてほとんど知られていない女性の作曲家イモジェン・ホルストの協力、才能と献身的なサポートがあって、オペラ『グロリアーナ』が生まれたのだ、というストーリーが描かれる。ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのプロダクションが、ロンドンのオレンジ・ツリー・シアターにトランスファーしたものの配信を視聴した。
イモジェンはグスタヴ・ホルストの娘で、音楽家としての才能があるが、偉大な父の功績を残すことが最も重要な仕事と思い込んでいるようなところがあり、父の影に隠れた存在である。また、ブリテンとの関係も対等とはいえず、度々「有名な男性作曲家の女性アシスタント」といったポジションに立とうとする節もある。二人の関係は、もっと複雑なものとして描かれるが、ベンとイモは協力し、時に激しくぶつかりながら創作を行う。
平たくいえば、ブリテンはかなり嫌なやつで、度々失礼でわがままで自己中心的な態度を取る。なんでこんなやつに入れ込むのだ、と観客としては何度も思うのだが、彼には否定できない才能と魅力があり、結局イモジェンは彼を許し、より深く関わろうとする。ブリテンを演じるサミュエル・バーネットは、インタビューで「彼が男性だから許された態度で、実際は許容されるべきものではない」と語っている。史実として、この後も長年彼女がオールドバラ音楽祭のために貢献するということも知っているので、複雑な気分になる。また、イモジェンもただの立場の弱い女性ではなく、エネルギッシュな性格で、彼女の踏み込み方をブリテンが拒否するが、態度を軟化させ受け入れる時もある。
ちなみに私は以前からサミュエル・バーネットが好きなので、彼の演技を見ているとつい許したくなる気持ちもわかる。俳優たちは職業柄とっても可愛く見える生き物だが、私はわかっていながら毎度毎度惑わされていて、自分でも困ったものだと思う。
周囲を客席がぐるっと取り囲んでいる狭い舞台空間に、ピアノと小物が置かれ、二人が狭さを感じさせないくらい器用に動き回る。こじんまりとした作りが特別な空間に感じる劇場だが、それが配信でもよく伝わってくる。最初から最後まで飽きずにずっと観ていられるのは、戯曲と演技がうまくできているのだろう。
さて、ここからはちょっと余談のような、しかしこれが個人的には一番言いたかったような話に入る。
終盤に、ブリテンは今までの言動以上に決定的に「言ってはいけない」、グサっと抉る攻撃的なことを言う。これが芝居の最後の山場になるのだが、配信ではこのセリフのタイミングで収録日の客席にいた俳優ロジャー・アラムのリアクションが差し込まれている。それが、アテレコするならば「うわーあ、言っちゃった!」という雰囲気で、パッと表情が明るく輝く。「上手いけどキツいジョークを言った時」みたいな喜んでいるような顔をするのだ。そして、これがイギリスっぽいリアクションなのだなあ、と思ったのであった。これが日本の劇場だったら、もっとショックを受けるような、傷つくような顔をして見ているような気がする。
それが何なのだ、ということは今はうまくいえないのだけど、この配信での印象的な瞬間の一つだった。
