リーマン・トリロジー

National Theatre Live: The Lehman Trilogy (2019)の日本上映を逃し続けていたのだが、日本での上映権が切れる前に滑り込みで鑑賞した。

The Lehman Trilogyの初演は2018年、ナショナル・シアターのリトルトン・シアターで上演されたが、このNTliveは2019年のウエストエンド公演(ピカデリー・シアター)を撮影したもの。

まずはこの舞台上映が日本で評判になり、何度もアンコール上映されたことが驚きだ。ブロードウェイ公演がトニー賞を複数受賞したことをうけてのアンコール上映であったこと、影響力のある人がすすめてSNSで口コミが広がったこと、「3時間半以上の舞台を3人の俳優が出ずっぱりで何十人もの役柄を演じ分ける」という意欲的な作りが話題になりやすかったこと、など複数の要因によるものだろう。

上映時間が3時間半、あいだに2回のインターバルがある芝居だが、内容はリーマン兄弟が南北戦争以前にアメリカに渡ってきた時から2008年のリーマンショックに至るまでを描くので、かなり駆け足に感じる。複雑な歴史をこの長さに要約し、さらに3人で上演できるようにまとめあげた脚本が素晴らしい。

そして確かに、3人の役者とさらに生演奏をしているピアニストの技量には凄みを感じるほどである。回転するガラス張りのセットの中で3人がセリフを言いながら歩き回っているだけなのだが、飽きることはない。3人の移動は慌ただしいが無理なく、登場人物を演じ分けられている。ガラス張りのセットはシャープで、語り口はスマートでありつつセンチメンタルでもある。どんどん変化する背後のビデオデザインもとても効果的。脚本・演出・演技・演奏・照明・ビデオ・美術など様々な分野の要素全てが素晴らしい出来で、そしてうまく融合しているところを享受できる。特に、晩年のロバート・リーマン(アダム・ゴドリー)が寿命以上に踊り続け、背景ビデオの図像の移動スピードが加速していくシーンは最高だ。

最初はユダヤ系ドイツ人の兄弟が新天地で奮闘する物語だったものが、いつしかアメリカの大手投資銀行の物語に変貌し、少しずつ築きあげてきたものが、巨大・肥大化しやがて破綻する。初演のロンドンよりも、この物語の舞台となったニューヨークで、より高い評価を得たのもうなずける。


原作:Stefano Massini 脚色:Ben Power 演出:Sam Mendes 美術:Es Devlin 衣装:Katrina Lindsay ビデオ:Luke Halls 照明:Jon Clark 作曲・サウンドデザイン:Nick Powell 音楽監督・演奏:Candida Caldicot 振付:Polly Bennett

出演:Simon Russell Beale, Adam Godley, Ben Miles

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