ロイヤルシェイクスピアカンパニー(RSC)の演目に出演した俳優が、自分の役のアプローチについて語るエッセイ集、Players of Shakespeare 2 (1989, Cambridge University Press)が面白かったです。これはPlayers of Shakespeareというシリーズの2冊目で、最初は1988年、一番新しい6冊目は2007年の書籍です。
Players of Shakespeare 2に載っているのは、1984年『ヘンリー五世』に主演したケネス・ブラナーの回顧手記、1983年『十二夜』のヴァイオラについて語るゾーイ・ワナメイカー、1985年『お気に召すまま』のシーリア役とロザリンド役のフィオナ・ショウとジュリエット・スティーヴンソンなどなど。ひとつの役についてここまでじっくりと役者が語るものを読めるのは貴重な気がします。
中でも、1983年『ロミオとジュリエット』のマキューシオ役について語るロジャー・アラムの文章が面白かったです。彼のアプローチは非常に分析的で、下準備や役柄分析、この場面のこのセリフはこういう意味と心情で言っているのだ、ということが順を追って書かれています。文章も明晰でわかりやすい。
やる側がここまで詳細に分析し理論立てて演じていることを知ると、鑑賞する側としても、今度ロミオとジュリエットを鑑賞する際に、マキューシオをみる目線の解像度があがる気がします。同じ演目はもう見られないのが残念です。
By his death Mercutio does, then, force himself between Romeo and Rosaline/Juliet, and start a chain reaction that destroys them both.
Roger Allam, p.119