舞台配信メモ3

遅ればせながら、配信で見たものの簡単な覚書を残しておこうと思います。

舞台配信:The Midnight Gang / This House / Coriolanus / A Monster Calls / Small Island / Wise Children

The Midnight Gang

チチェスター・フェスティバル・シアターの配信で視聴。原作はDavid Walliamsの同名児童小説で、作曲はJoe Stilgoe。

子役が活躍するストーリーなのだが、やはりみんな達者。セットや小物や衣装は見所もあり可愛く纏まっていると思ったが、物語と音楽にはあまり入り込めずちょっとパンチが足りない印象。一曲ソンドハイムを強く思い起こす曲調のものがあった。

This House

ナショナル・シアターの配信で視聴。ジェームズ・グレアム作、元々は2012年にNTのコッテスローシアターで初演。映像は翌2013年にオリヴィエシアターで上演したもの。2016年にチチェスターとウエストエンドでリバイバル公演が行われており、私はこのウエストエンド公演を一度鑑賞している。

1960年代の英国議会を舞台とした専門用語が飛び交う会話劇だが、ファンの人たちによる勉強資料の準備もあり、期待度が高く日本語で感想を呟いている人も多かったので、オンライン試聴が楽しかった。私は出演のチャールズ・エドワーズを贔屓にしているので、本プロダクションをようやく配信で見ることができたのも、とても嬉しかった。

最後にはほろ苦さが残るが、喜劇色を強く感じる政治コメディで、笑える部分が非常に多い。今までのジェームズ・グレアム作の中では、The Voteにトーンが近いように思える。ドラマCoalitionもだが、これらの政治劇がある程度の軽さを保っていられるのは、劇中の時代も戯曲制作時期もBrexit以前だからなのではないかという気がする。もっと近年に放送・上演されたBrexitやInkとは、何かが違うような感触があるが、うまく言葉にできない。

これがウケたということは––というかそもそも政治サタイアというジャンルに人気があるという時点で、イギリス人の政治への関心の高さが再確認できる。

Coriolanus

ナショナル・シアターの配信で再度試聴。ドンマーウェアハウスでの上演と、日本のナショナルシアターライブでの上演、字幕が直ったアンコール上演も鑑賞している(日本語字幕ハチャメチャ事件が懐かしい)。

トム・ヒドルストン主演で人気のあった2013年のプロダクション。私もイギリスに旅行して見ており、これが初めてのシェイクスピアだったのだが、実は予習でも本番の舞台でも結構つらい気分になった思い出がある。のちに他にも様々なシェイクスピア作品を鑑賞する経験を経てから、今になってこの配信を見てみたら、単に好みのプロダクション/戯曲ではなかったのだなと分かった。

当時から美術は全く気に入らなかったが(ちょっと反りが合わないデザイナーなのだ)、演技がナチュラリスティックではない点や怒鳴る演技が多い点など、私がしばしば苦手に思う点をカバーしていたので、上演当時見ていて疲れてしまったのは当然だっただろう。現代人としてはコリオレイナスの思想がどうにも受け入れがたいのも変わらないが、オーフィディアスかシシニアスを主役にした楽しい翻案劇でも今後作られることがあったら…もう少し許せるかもしれない…。

しかしこれで俳優のエリオット・リーヴェイを知り、それ以降いくつも出演作を見ることになったし、シェイクスピアやストレートプレイもすすんで見るようになったので、今となってはそれなりに良い思い出のプロダクションだ。

A Monster Calls

パトリック・ネスによる同名小説の舞台化で、ブリストル・オールド・ヴィクとオールド・ヴィク共同のプロダクション。2018年オールド・ヴィク公演のアーカイブ映像を配信で試聴。

NTLiveは複数のカメラとカットを用いて生の演劇を非常にうまく映像におさめ、映画館での配信に耐えうるものに仕上げている。それに比べ、この配信映像はアーカイブ保存用のための定点カメラの映像なので、カット割りやアップのショットなどは無いのだが、舞台全体を遠くの客席から眺めている劇場体験に近い感覚があり、逆に新鮮で好ましく思えた。

キャストは多くの時間舞台上の椅子に座っていて、セットはほとんどない。ロープで再現する木や、奥の壁に四角くくりぬいたような空間にバンドがいる様子など、一見素朴な手法にも思えるが、その抑制の効いた美術や音楽の選択に洗練を感じる。

主演のマシュー・テニソンによる、頑ななローティーンの演技に説得力があり、最後はつい泣けてしまう。

Small Island

ナショナル・シアターの配信で試聴。Andrea Levyによる同名小説(2004)が舞台化され、2019年に上演・NTLive上映された。

第二次世界大戦〜大戦後すぐの、ジャマイカを離れイギリス本土に渡った移民の物語。様々なレベルの差別にあう境遇が描かれていて見ているのも辛いくらいだが、フィナーレでは希望を抱いて生きていくことを諦めないスタンスを示し、むしろポジティブなエネルギーを発している。長時間鑑賞してきた観客として、感情としてはrewardingな(報われる)終わり方だったと思ったけど、道理として納得できるわけではないという苦さも残る。

家具など、それぞれの舞台美術はリアリスティックだが、空間を贅沢に広々と使う配置。セリで家具を出したり片付けたりして場面転換をするのだが、時に、脇役の俳優たちの出入りも同様にセリで処理し美術扱いしているという違和感が、主役陣とそれ以外を視覚的にも切り分けている。

Wise Children

ブリストル・オールド・ヴィクの配信で試聴。アンジェラ・カーターによる1991年の同名小説の舞台化で、オールド・ヴィクで2018年に初演。

シェイクスピア俳優の双子の娘を主役にした物語をマジックリアリズム的手法で描く小説だそうで、舞台でも幻想的な美術・衣装・キャスティングで世界観を作り込んでいる。全体的にバーレスクっぽい雰囲気だ。100歳のドーラとノーラを、ベテラン俳優のギャレス・スヌークと振付も担当したエタ・マーフィットが演じているところが一番のミソかもしれない。音楽の使い方も俗っぽくて楽しく、There May Be Trouble AheadとIs You Is Or Is You Ain’t?、シンディ・ローパーをアレンジして物語に入れ込むあたりが印象的。

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