Oppenheimer

RSCによるオリジナルキャストによるリーディングを配信で視聴。2014年にストラトフォード=アポン=エイボンで初演、のちにウエストエンドにトランスファーした芝居。3時間程度。配信は10月15日19時(GMT)から24時間だった。

作:Tom Morton-Smith 出演:John Heffernan, Catherine Steadmanほか

こちらは2015年当時のトレイラー

主人公の「原爆の父」ロバート・オッペンハイマーが、若い教授として大学で勤めている時代から始まり、政府の要請で戦争に協力し原爆を開発する期間、戦後直後までを描く。家族、恋人や友人に共産党員が多かったこと、研究の発展、私生活の苦悩と、軍やFBIの圧力が徐々に重荷になってくる様子が描かれる。

マイケル・フレインの『コペンハーゲン』(1998)以来の、原爆開発に関わった科学者の責任を問う芝居ではあったが、物語の大部分は「なぜそういうことになったか」を描くことに割かれている。爆弾投下頃には投下賛成側の立場だった主人公が、最後に自責の念の吐露するのはやや唐突だ。しかしながら、「自国の兵士を守ることになったが、他国の市民なら殺していいのか」というかなり直接的な問いかけは『コペンハーゲン』には出てこなかった。これがイギリスの舞台にかかるのに原爆投下から70年という歳月がかかったことは記しておきたい。

このリーディングの配信は、Zoomを用いて場面ごとに俳優が画面上に出入りする。出演者は全員ヘアメイクと舞台衣装は身につけておらず、背景も白で揃えている。Zoomを用いたリーディングは、舞台上の配置、首から下の動きや体勢、部屋に入ったり出たりの移動などの要素が再現できないのがネックだ。セリフの多い主人公とずっと黙っている脇役が、全く同じサイズで画面に表示されているとちょっと面食らう。

たまに舞台写真が挿入されてセットや俳優の躍動感ある動きが見えると、一気に舞台の様子が立体的に把握できるような印象があったので、もっと頻繁に写真を使ってくれた方がよかったと思う。また、配信動画の視聴者のコメントにあったように、Zoomの名前表示機能を用いてキャラクターの名前を表示させても良さそうだが、アンサンブルの負担が大きいだろうか。

つまりこのような制約が多い形の配信では、本来の舞台の感触がかなり削ぎ落とされてしまうため、かなり見ていて辛いものがあった。もう上演されていない芝居のことを知る経験としては良い機会ではあったのだが。もっとも、明らかに他の場にいる役者たちそれぞれが衣装をつけていればいいものでもないだろうし、合成で背景をつけられても興ざめしただろう。いっそ音声のみのラジオ放送のようにしてはとも思ったが、役者の表情と身振り手振り、役者の出入りの視覚情報無しでは、戯曲が理解しづらいことも予想がつく。結局、映像を用いた配信ではこれが精一杯なのか。

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