Copenhagen

Copenhagen (Minerva Theatre, Chichester)

2018/9/20

作 Michael Frayn

演出 Michael Blakemore/デザイン Peter J Davison/照明 Mark Henderson/音響デザイン Carolyn Downing/ビデオデザイン Nina Dunn/キャスティング Charlotte Sutton

出演 Charles Edwards, Patricia Hodge, Paul Jesson

感想

舞台は抽象的な空間での思考実験のような体裁をとる。「なぜあのとき彼はコペンハーゲンに来たのだろうか?」物理学者ニールス・ボーア、その妻マーガレット、弟子の物理学者ヴェルナー・ハイゼンベルグが、ナチ支配下のコペンハーゲンで再開した。彼らは、その日に何があったのかを思い出そうとし、様々なバージョンを再現してみる。記憶は曖昧で、何回再現してみても、いまの自分の希望が入り込んでしまう。

演出、デザイン、照明は、1998年の初演時と同じ布陣だ。おそらく舞台の見た目はその時のものを再現している。

舞台はかなりシンプルで、メインのセットは1つのドアと椅子3脚のみ。照明がときどき、ドアや廊下を示すように照らす。

その分、俳優とセリフが際立つ。戯曲も、俳優が3人で会話をするだけだ。

言葉数が多く、会話のテンポはかなり早い。一幕後半から会話が静かにヒートアップしていく様がエキサイティング。人の心をつかまえる芝居だと思う。バーナード・ショーのSaint Joanのように、議論が議論として機能している議論をする芝居が好きなので、これも大変好みだった。

チャールズ・エドワーズ(ハイゼンベルグ役)目当てで見に行ったが、彼は本当に素晴らしい。一人で長々とセリフをしゃべっているだけなのだが、全く飽きない…とは、どういうことなのか私には説明もしきれない。ウロウロと歩き回りながら、時に立ち止まったり、顔をあげたりするが、大きなアクションもない。しかし緩急に富み、思い出や思考の流れがスルスルと入ってくる。

最初はNTのWaste(2015)で気に入ったのだが、彼がたくさんの言葉を語る芝居は、本当に素晴らしいという確信を持った。今後も出来るだけ追いかけたい。

ネタバレ含む反省

最初からずっと面白く楽しく見ていたのだが、最後のオチが、ハイゼンベルグが作らなかった原爆の話になるとは思っていなかった。

おそらく私は、第二次世界大戦時の原爆に関わる話題になると、冷静さを失ってしまうところがある。なので、最後の最後、芝居を見る目が曇ったと思う。

効果的に登場する爆発音とキノコ雲の映像が、ムッとするくらい気に障り、急に話が頭に入ってこなくなった。

ナチスが原爆を落とさなくてよかったね、ということに反対はしない。けれど、私はどうしても、パリやアムステルダムやコペンハーゲンには落ちなくてよかったねというだけで、胸をなでおろしきれなかった。

この戯曲を、日本でやったときはどんな風だったのだろう。良い評判は聞いたので、日本でも是非見てみたかった。

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