Sylvia (Old Vic)
2018/9/22
作 Kate Prince, Priya Parmar/音楽 Josh Cohen, DJ Walde
演出、振付 Kate Prince
美術 Ben Stones/照明 Natasha Chivers/音響 Clement Rawling
出演 Maria Omakinwa, Beverley Knight, Witney White, Delroy Atkinson, Jade Hackett, Carly Bawden, John Dagleish
感想
元々はダンス公演の委託だったものを、途中でミュージカルとして制作することにしたプロダクションだ。
サフラジェットをテーマにした新作ミュージカルで、主役は活動家シルヴィア・パンクハースト(1882-1960)。出てくるのはほとんどが史実上の人物で白人なのだが、俳優の多くは有色人種のキャストで、音楽もヒップホップやソウル、ファンクを用いる。主演キャスト等に体調不良などが相次いただめ、主演をアンダースタディがつとめ、上演期間最後までプレビューとして公演が続けられた。
私が見たのは最終日のマチネ公演。ようやく芝居が最後のシーンまで上演されるようになっていた(それまでは話が半ばで終わっていた)。プロダクション側から、本来目指したものには到達していない、本来ならプレビューの間に構成を短くまとめたかったが叶わなかった状態であるという断りがあった。
やはり、公演が3時間以上かかるのはあまりに長すぎる。一般的な伝記的ミュージカルと比較すると、様々な人物に光を当て、エピソードを順を追って描いているので、どんどん上演時間が長くなってしまう。
何より曲と曲・シーンとシーンが細切れすぎる。もっと思い切って整理することが必要なのは明白だ。一本筋を通して最初から最後までまとまりにしてくれなければ、「劇」とは言い難いと感じた。
しかし私はこの演目が大好きだった。音楽、歌、踊り、全部がかっこよかった。
劇としては不完全でも、伝えてくるメッセージはとても感動的ではげまされる。女の子のエンパワメントがこんなにかっこいいことが嬉しい。
舞台の奥に高い段がありその上の箱にバンドがおさまる。舞台手前と奥の段の上とを使った場面の作り方や転換もなかなか良いと感じた。俳優は全員うまかったが、エミリン・パンクハースト役のビバリー・ナイトが、歌い出すと圧巻。ディーヴァと謳われるだけのことはある。本来は保守的なおばあさんであるはずのチャーチルの母親が、序盤で一番ハードでカッコイイラップを披露するところで客の心をぐっと掴んだ感触があった。
音楽的にはとても楽しいし、曲ごとの緩急が無いわけではないので、ミュージカルとしてのポテンシャルもあると思う。
Old Vicウェブサイトのシルヴィアのページには、COMING SOONの表記が。今後の展開に期待したい。