Allelujah! (The Bridge Theatre)
2018/9/18
アラン・ベネット最新作、ニコラス・ハイトナー演出の『アレルヤ!』を2018年にロンドンのブリッジ・シアターで鑑賞した。
ヨークシャーの病院に長期入院する老人たち、そのスタッフ、見舞客などの交流を通して、EU離脱投票可決以降の社会を背景に、現代イギリスのNHSのあり方を注視する。
実は、そこまで評価できないと思ったのだが、日本のNTLiveの評判が予想よりよかった。私もNTLを再び見てから感想を書こうと思っていたのだが、見逃してしまったので1年前のメモを投稿しておく。ちなみに観劇前にスクリプトを入手し、あらかた読んでしまっていたので展開は事前に分かっていた。
作 Alan Bennett
演出 Nicholas Hytner/デザイン Bob Crowley/照明 Natasha Chivers/音響デザイン Mike Walker/振り付け Arlene Phillips/作曲 George Fenton
出演 Deborah Findlay, Peter Forbes, Samuel Barnett, Sacha Dhawan, Cleo Sylvestre, Julia Foster, Jeff Rawle, Simon Williams等
感想「もう一押し欲しい!」
正直なところ、ちょっとプロットが未熟なのではないかと思った。
セリフは小気味好く、笑えるジョークはたくさんあった。大人数のアンサンブルを混乱なくよくさばいたとは思うし、演技も悪くはない。しかし、私がこの物語のフィナーレで感動するためには、事前に登場人物や展開に感情移入できている必要があっただろう。
コリンとジョーの親子の話なのか?ギルデハーストとバレンタインの友情の話なのか?バレンタインの立場をめぐる話なのか?NHSの現状を嘆くのか?
これらのどれかをもっと中心に据えて、もう一歩踏み込んだ描写があれば、後半の展開でもっと大きな感動がやってきたと思う。
中盤からものすごく重要な役割を担う婦長ギルデハーストも、どんな人なのかもあまり深く心に刻まれることがないままであった。主要キャストの造形がみな宙ぶらりんなのだ。小人物に描かれる院長ソルターのほうが、よっぽど現実味があった。こういう人居るよね!という感触がある。それに引き換え、ワークエクスペリエンスの少年の造形は見ていられなかった。
ベネット&ハイトナーの組み合わせということでチケットを購入し、『ヒストリーボーイズ』のサミュエル・バーネットとサシャ・ダワンがキャスティングされてとっても喜んでいただけに、事前に期待しすぎていたのかもしれない。
また、題材に馴染みがないことはかなりマイナスだったとは思う。アラン・ベネットの代表作『ヒストリーボーイズ』(2004)は、「私も知ってる」と思えた世界だったが、今回はそう思えなかった。特に老人たちがコーラスする歌や、踊りの示す文化にも馴染みがないため、イマジナリーな音楽シーンも時間を割いている割に効果がなんだか薄い。もっともこれは、客席を埋め尽くしていたイギリス人と思われる高齢の観客たちにとっては、琴線に触れる演出だったのかもしれない。
ちなみに、鑑賞したのは最前列のA列で、予約後に「舞台が高くなり、視界があまり良くないので座席を値下げします」という連絡があった。実際に鑑賞してみるとほとんど問題は感じなかったのだが、最後のシーンの背景転換が全く見えなかったので、フィナーレの感じ方も変わってしまったのかなと思う。