Bubble

2020/10/24 マチネ Nottingham Playhouseの観客入り公演の生配信を視聴。

作:James Graham 出演:Pearl Mackie, Jessica Raine

劇作家ジェームズ・グレアムは、近年の政治的な出来事をとりあげてドラマ化する作品This House, Ink, Brexitなどが代表作である。批判の多い人物や行動を取り上げるが、渦中の実在の人物の描き方は、世間一般よりも彼らの理想に寄り添おうとする優しいものだということは毎回感じる。その優しさは、様々な立場の人間の動機や感情の流れを読み解きたいという立場とも言い換えられると思う。新聞などの批評では、題材をロマンチックに描きすぎなのではないかという指摘もしばしばされていると思う。

対して、新作Bubbleは実在の人物を取り上げたものではない。2020年春の一回目のロックダウン中のイギリス在住者が経験したと想像できる様々なことを、1組の架空のカップルに代表させて描く。軽妙なコメディに社会の中にある差別をさらりと盛り込むような手法と、実際の固有の出来事ではなく「あるだろうこと」を描くという点で、劇の性格としては過去作のThe Voteに近い。

登場人物は、マッチングアプリで初デートを楽しんだばかりの女性二人だが、ちょうど明日からロックダウンに入るというニュースに動揺。衝動的に片方がもう片方の部屋に移り住み一緒にバブルを形成するバージョンのストーリーと、それぞれの部屋で自主隔離しつつオンラインで交流するバージョンのストーリーが交互に描かれる。人間に対するロマンチックな視線はこちらにも存在する。観客の記憶にも新しい出来事に舞台上の二人も反応するが、それぞれのストーリーでは、その結果の二人の会話は異なる様子になる。どちらかでは口喧嘩になったことが、もう片方では全く問題にならずに次の話題にすぐに切り替わるなど、個人の差や環境の違いで、同じ出来事が異なる受け止められ方をすることを描いていく。

Bubbleは軽やかな語り口で、観客の記憶の中の感傷に触れつつ、深刻な問題は深入りする前に切り上げ、駆け足でロックダウン期間を総括するコメディだった。私でもとても笑いやすかったのには、ローカルネタがほぼ無いに等しく、出演者も標準アクセントで話しているという要因もあった。閉鎖的な劇場空間よりも、全世界向けストリーミング用に書かれたのだろうが、あまりに万人向けらしい仕上がりで、全国放送テレビのコメディのようだった。

ただ、ロックダウンを経験した劇作家や俳優たちが、このスピードで新作芝居を書き上げ上演してしまうアウトプットの速さはすさまじい。日本でロックダウンも経験していない身からすると、違う世界の経験を、報道とは違う感情ののったフィクションとして提示してもらえた機会でもあった。

出演者二人はどちらもエネルギッシュで可愛く、見ていて笑顔になれるようなカップルを演じていた。レズビアンカップルが物語の中心になる舞台を見た記憶が実はこれまで無いので、その点でもこのような劇を見る機会があって嬉しい。

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