実は今週は毎日つぶやき+α程度の感想をあげています。舞台美術のイラストは舞台を見るたびになるべく描いていますが、アップできるのは来年になりそう…。イギリスはクリスマスだったので、リンクまとめもまた来年。みなさま、良いお年を。
Come From Away (Phoenix Theatre)
11/5/2019
2017年のトニー賞で知ったミュージカル。ロンドンで公演しているのは、2018年末にダブリンで上演した座組が2019年1月からウエストエンド のフェニックス・シアターにトランスファーしたもの。楽しいものが見たかったので当日TodayTixで購入したが、値段の割に良い席で鑑賞できた。
作: Irene Sankoff and David Hein 演出:Christopher Ashley 舞台美術:Beowulf Borrit 衣装:Toni-Leslie James 照明:Howell Binkley
出演:David Thaxton, Rachel Tucker, Clive Carter, Nathanael Campbell, Jonathan Andrew Hume, Emma Salvo, Jennifer Tierney, Harry Morrison, Robert Hands, Cat Simmons, Helen Hobson, Jenna Boyd
感想
2001年9月11日、同時多発テロの発生を受け、ニューヨークに向かっていた飛行機は別の土地に急遽着陸することになった。多くの飛行機の受け入れ先となった、カナダのニューファンドランド島の小さな町ガンダー。人口以上の人数が、何の用意も、もちろんホテルも無いところに押し寄せることになった、テロ発生以降の数日間を描く。劇場ホワイエには、ガンダーの場所や情報、事件当日の飛行機や影響を受けた人数などがインフォグラフィック風に書かれているので、開演前に確認できる。
9.11に関連した実話をもとにしているにしては、予想以上にフィールグッドなミュージカルだった。
もちろん、苦しみや悲しみも描かれるが、それよりも、人々が交流によって救われる側面が強調される。
大変なことが起こったときに助け合いが起きるという点では、レベッカ・ソルニットの『A Paradise Built in Hell: The Extraordinary Communities That Arise in Disaster』のようでもあり、差別を描くシーンもやや背景の方に配置されていて、決定的な悪役や悪人が出てこないという点では映画『パディントン』のようでもあった。
登場する人々は、普通のカナダ人たちと、たまたまその日飛行機に乗っていた人たちで、観客である私たちと変わりない。舞台上の世界の方が、もっと良いバージョンの私たちではあるが。
俳優は皆二人かそれ以上の役柄を担当している。そこに相乗効果があるわけではないのだが、少ない人数で多くの登場人物を描き分けているという脚本と演出、演者の手腕が光る。
飛行機の機内を表現するための演出は大掛かりなことをしていないが、充分な説得力があった。かなり控えめだが、確かに効果のある盆の使い方にも好感を持った。
音楽も楽しかったが、ビッグナンバーが無いかも…音響かもしくは俳優のパワーが足りないように感じ、大作ミュージカルでは音の圧力を感じれるものかと思っていたので、やや残念。Stop the Worldがふいにロマンチックにはじまるところでは思わず泣いてしまった。