Operation Mincemeat (Fortune Theatre)
8/24/2023
脚本、音楽、作詞:David Cumming, Felix Hagan, Natasha Hodgson and Zoë Roberts (SpitLip)
出演
Charles Cholmondeley & Others: David Cumming
Jean Leslie & Others: Claire-Marie Hall
Hester Leggett & Others: Jak Malone
Ewen Montague & Others: Holly Sumpton (understudy)
Johnny Bevan & Others: Geri Allen (understudy)
第二次世界大戦中にイギリス諜報部の行ったミンスミート作戦を題材にしたコメディミュージカル。ミンスミート作戦とは、シチリア上陸を計画しているイギリス軍が、ドイツ軍を欺くため、「サルデーニャ上陸を計画している」という偽文書を用意し、偽の軍人の遺体に持たせてスペイン沿岸に漂流させたというもの。NHKでやっていたドキュメンタリーを事前に観ておいたのがかなり理解の助けになった。
題材も確かに謎めいていて興味深いが、それがめちゃくちゃ笑いの多いミュージカルになってウケるところがさすがイギリスだ。(V&A Museumに、Laughing Mattersというブリティッシュコメディに特化した展示もあわせてオススメ。ただし展示期間は終了している扱いだからか、欠けている展示品も多い)ちなみにラメの血糊が出てくるのは前日のLa Cage Aux Follesに続いて2本目。
2019年のニュー・ジオラマ・シアター、2020年、2021年にサザック・プレイハウス、2022年にリバーサイド・スタジオでの上演を経て、2023年3月からウエストエンドのフォーチュン・シアターで上演されている。制作陣の多くがオリジナルキャストも務めている。私が見た時は、出演者5人のうち2人(モンタギューとジョニー)がアンダースタディだったが、プログラムを見るまで誰がアンダースタディか分からないくらい馴染んでいた。
キャストは5人のみ、そこまで大掛かりなセットチェンジもないコンパクトなミュージカルだが、音楽のチョイスと、ほとんど休みなく出ずっぱりの5人の目まぐるしい振付と演じ分けが、非常にクレバーで満足度が高い。ほとんどの役者が男性の役も女性の役も演じていて慌ただしいが、観ていて混乱することはない。モンタギューのようなおじさんを本当におじさんがやっていたら鼻持ちならないと思うが、若い女性がカリカチュア化して演じ、軽やかに笑い飛ばしている。
音楽は基本はミュージカルらしい楽曲がベースにある中に、ポップ、ラップなどのスタイルの曲を混ぜて、緩急をつけている。急にDon’t Hug Me I’m Scaredで出てくるようなやや抜けた感じのあるラップが入ったり(参照YouTube Time)、Sylviaで見たような気合いの入ったラップが入ったり(ラップ形式の理解がないためにこんな説明になってしまった)するのだが、潜水艦チームの曲が急にスコットランド風になって、ノスタルジアが付与されているところに笑ってしまった。
笑いながら見ていたのに、歴史的には名もなき女性職員であるヘスターが歌う”Dear Bill”の不意打ちに涙してしまう。演じるジャック・マローンも大変素晴らしかった。ミュージカル全体を通して、歴史に名前の残らない女性職員の悲哀にしっかり焦点を当てているところも良い。
第一幕が盛り沢山なので、比較するとやや第二幕が短く感じた。締めくくりのいわゆる「ビッグナンバー」の名曲があるとミュージカルとしてのバランスがより良くなる気がするが、あんまりトラディショナルな形式を求めるタイプのミュージカルでもないだろうか。
すでに強力なファンベースが出来つつあるミュージカルで、チケットもよく売れているよう。私が見に行った時も、前列の人が鑑賞は3回目、同じ列の人は17回目(!)と言っていた。